最終更新日:2003/03/21

テレビゲームの無罪/有罪

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 「テレビゲームの影響で…」
 世の中が本当に変わったのか?

 ゲームと付き合ってきた「今まで」と
 ゲームの目指すべき「これから」を
 真剣に考えていこうと筆をとりました。

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           〜 テレビゲームの無罪/有罪 〜

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 2003/04/22 vol.5
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 「テレビゲームの影響」という言葉の影響 その3    by大守哲哉
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 「テレビゲームの影響」で「リセット世代」が生み出されたらしい。

 「リセット世代」とは、都合の悪いことがあると、リセットボタンを
 押すような感覚で短絡的な行動を取る子供たちのことを示している。
 若年層の男子による事件が連続して起こり、はじめて「テレビゲームの影響」
 という言葉がニュースメディアで踊っていたころに、誰が言い出したのか
 使われていた言葉だ。

 「リセット」という言葉を一般化したのはゲームに限らずコンピューター
 (パソコン)などなのだが、スーパーファミコンなどのゲーム機にリセット
 ボタンが付いていたり、ゲームの説明書に「リセット」という言葉が
 使われるようになったからか、若い世相が日常会話でも「リセット」を
 使うようになった。

 おそらく「リセット」イコール「困った状態を通常の状態に戻せる」
 「なかったことにできる」という意味に定着したのは、やはりゲームの
 影響だろうと思う。
 「リセット世代」は最近でこそあまり聞かなくなった言葉だが、世の中
 のほとんどの人が今では「リセット」という言葉を使うようになった。


 そもそも「リセット」は機械的な障害を補正するためにあって、ゲームの
 世界や物語をやりなおすためのものではない。
 しかし、「リセット」をうまく使うことで、ゲームではプレイヤーに都合の
 よい展開だけを進めていくことができる。
 そのため「リセット」はゲームの完成度とかなり密接につながっていて、
 リセット後の設定(設計)はゲーム開発者の毎度の大きな悩みどころなのだ。

 「リセット」のありよう次第でゲームの世界は完全に崩壊してしまう。

 ユーザーに「リセット」させないために、ゲームの「リトライ」設計が
 生まれ、進化したと言ってもよいくらいだろう。
 「リトライ」はゲームとプレイヤーの納得できる妥協点を提示している。

 ところが、それも至れり尽くせりでプレイヤー寄りに作ってしまうと
 ゲームが全然面白くなくなってしまう。
 行き届いた「リトライ」はゲームの本編からはずして「おまけ」や2周目に
 位置づけるゲームもある。
 本編を体験したプレイヤーからすれば、行き届いた「リトライ」はそれ自体
 パロディのようにも感じてしまう。
 「やりなおしが効く世界」とはそういうバカバカしさが漂うものなのだ。

 しかし、この「リセット」という言葉とともに蔓延した「やりなおしが効く」
 ような空気は少なからず現実世界にも影響を及ぼしている。
 どうしてこのような空気がゲームからもれ出してしまったのだろう。

 「冒険をする」と「冒険を感じる」

 このふたつには大きな差がある。
 RPGやAVGといったゲームの中で「冒険」を体感しているプレイヤー
 特に子供たちは果たしてこの区別がついているだろうか?

 私たちが子供の頃は、冒険活劇をマンガやテレビで見てはごっこ遊びをして、
 シミュレートしていることがあった。
 その中で、役割上本当に「冒険をする」ことがあった。

 私たちの頃のヒーローは高いところに現われる。
 登場後に「とう!」という声とともに地上に降臨するのだ。
 変じて高いところから飛び降りられることがヒーローの条件となる。
 誰からともなく競って高いところから飛び降りるという「冒険」が始まる。
 段々とエスカレートしていってケガをすることもあった。

 しかし、仲間の誰かが危険を察知して限界を示すと、これが自分たちの
 今の限界だと認識して、分析能力を年齢なりに総動員して、この限界を
 超えるためのプロセスを組み立てていた。
 着地後に屈伸したり、柔らかい土のところに着地したり、何かにつかまって
 降りたりと、どんどんアイデアや工夫が出る。

 これこそが「冒険する」ことなのだ。

 危険なことをしているのが見つかって、親や大人にむちゃくちゃ叱られる
 こともあったが、それを含めて「リセット」は一切ない。

 「リトライ」を含めてお膳立てされたものの中で、テレビゲームは
 プレイヤーたちに軽薄な「冒険」をさせていないだろうか?

 かと言って「リセット」や「リトライ」のできない、プレイヤーに厳しい
 ゲームを作ることが親切だろうか?そこまで単純な話ではない。

 大切なのはそのゲームの中に込められた作り手の想いなのだと私は思う。

 お膳立てされた世界とは、現実世界も同じなのかもしれない。
 「リトライ」できないことや「リセット」できないことにイラ立っている
 人たちがいるのはのはそういうことなのだろうか。

 自分たちの直面している現実の時間は、急に止まったり、巻き戻ったりして
 「なかったことに」にはならない。
 当たり前のことなのに、昨今の社会にはなぜかそこに
 飽きたら「リセットが効く」ようにやめられるような空気が漂っている。

 逆に「リセットが効く」「なかったことにできる」ことに、真剣に挑戦する
 ほうが難しいばずではないか。
 社会に根付いた「リセット」の意識はそこに問題がある。
 「リセット」という言葉を使うだけで、本気にならなくてよいような軟弱な
 空気がどんよりと漂ってくる。
 まるでゲームの中にいるような世界。
 一部の人々はその錯覚の中に取り込まれているのかも知れない。

 人を導くことに仕事として、もしくは立場としてかかわっているすべての
 人たちはこの空気を吐き出させるための何かに取り組まなくてはならない。

 ゲームには何かできるのか?

 ゲームにもそれぞれの役割はあるので、すべてのゲームには当てはまらない
 だろうし、答えもすぐには出せないけれど、ゲームのキャラクターと意味の
 ある時間を過ごした思えるようなものを目指すべきではないだろうか。

 同じ「冒険を感じる」なら心が熱くなるような冒険を感じたいと私は思う。

                           つづく
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 ◇今回のゲームの弁護

 「リセット世代」と呼ばれる短絡的な若年層を育てた罪についてテレビゲーム
 は無罪を主張します。

 しかし、世の中に「リセット」という言葉の間違ったイメージを定着させた
 ことについて一部の罪を認めます。

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 ▼ 気になる情報
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 アトム誕生を再現 横浜のロボット博覧会
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030406-00000079-kyodo-soci
 とうとうこの日がやってきた。近未来と言われていた過去のSF大作たちの
 舞台になっているはずの時代が現代となった。
 天馬博士にふんした手塚治虫さんの長男の真さんが鉄腕アトムと握手した。

 京都駅にも展示があるんですが…(^ ^;;
 2003年4月7日はアトムの設定上の誕生日なんだそうです。
 私たちを育ててくれた作家さんたちの作品が実際にはじまるはずの
 近未来だった時間に自分たちの足跡がついていきます。

 DoGA主催 15th CGアニメ コンテスト 入選作品上映会
 http://doga.jp/contest/
 ●東京会場 日時:5月11日(日)
  会場:なかのZERO 大ホール(東京都中野区中野2-9-7)
 ●大阪会場 日時:5月18日(日)
  会場:大阪市中央公会堂(大阪市北区中之島1-1-2)
 ああ、今年もまた応募できなかった…(TT)
 くわしくは上記サイトでチェックですぞ!


 ※リンク先の情報がなくなる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
  できるだけお早い目にご確認いただくようお願いいたします。

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 ▼ かなりいい話
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  出張のため昼下がりにJRの駅のホームにいたときのことである。

  「ピロピロやって〜っ!」

  子供の声が聞こえたのでそちらに目をやると、幼稚園児たち
  十人ほどが先生に引率されて散歩をしているところだった。
  「せーの」と今度は先生があおる。
  「ピロピロやって〜っ!!」
  園児たちの声がピタリとそろい前より大きな声になる。
  私は何のことかわからず、とにかくそちらを見ているとホームに停車中だった
  新快速の電車が動き始めるところだった。

  ピロピロピロリン〜♪

  電車はホームを離れながらクラクションを鳴らした。
  なるほど、電車のクラクションはプァン!という簡素なものだけでなく、
  そんなチャイムのような音を鳴らしていた。
  クラクションを聞いて、園児たちは喝采を上げる。
  「せーの」と先生がすかさず園児に指示を出す。
  「ありがと〜っ!!」
  ヒヨコたちの甲高い声がピタリとそろい、気持ちのいい言葉があたりに広
  がっていく。
  電車はさらに速度を上げながらもう一度クラクションを鳴らす。

  ピロピロピロリン〜♪

  本当はいけないことなのだろうが、誰がとがめようか。
  JRの運転士も粋なことをする。
  園児たちはこのことを一生覚えているかも知れない。
  春のひととき、しばらく頬がゆるみっぱなしだった。

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 ▼ お知らせ
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 施設イベントで子供とゲームの話をしよう 無事終了!

 4月20日に福井県敦賀市の財団法人若狭湾エネルギー研究センターで
 行われましたイベント「春の施設公開 エネ研 てんこもり5」の中で
 「テレビゲームってどうやって作っているの?」という講座を行いました。

 任天堂株式会社さんに許可をいただき、「20年前のゲームをしよう」という
 ファミコンのゲームコーナーも開設することができました。

 子供ちゃんたちも大騒ぎ。楽しいイベントができました。
 お話にご参加いただいたクリエイターはたった1人…これはさびしかったです。

 くわしい報告は近日発行の次回にて。
                              by 大守
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  マガジンID 0000106176
  発行部数  127部
  発行開始  2003/03/05
  発行人/編集長 大守哲哉         http://www.up-stream.jp/
  制作/著作   UP-STREAM Game Developers Network
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